お念珠のいろいろな事
お葬儀や法要の際に欠かせない「お数珠」は、その意味を知らずにお参りされていらっしゃる方も多いのではないかと思います。
はるかむかし、お釈迦様が波留離国の国王に108個の木槵子(もくけんし)の実を繋ぎ、いつも手にして心から三宝の名を唱えれば、煩悩が消え災いもなくなるので心身が楽になるでしょう…と語った事が「仏説木槵子経」に説かれています。仏教が中国から日本へ伝来した際に数珠も一緒に入ってきました。
正倉院には聖徳太子様が愛用されていた数珠や聖武天皇の遺品として水晶と琥珀のお念珠が現存しています。
一般の人々に広まったのは、鎌倉時代以降の事です。
お数珠には除災招福の神力があり、持っているだけで魔除けになると言われて「功徳」が備わっていると信じられてきました。早速、箪笥の引き出しに入れっ放しになっているお念珠を出して三宝の名を唱えてみようと思います。
「南無帰依仏、南無帰依法、南無帰依僧…」宝くじが当たりますように…の「煩悩」が消えるのか、宝くじが大当りして「幸福」が訪れるのか、宝くじが外れて当たっていたら起きるはずの「災い」を逃れる事ができるのか、功徳もその時々人それぞれと言う事でしょうか。
お寺様で結婚式を行うと司婚者(ご住職さま)から結婚数珠が授与されます。ご縁あって結ばれたお二人の幸せを願う「寿珠」です。そしてお数珠の「珠」は「魂」であり、魂と魂の結びつきは「結魂式」と言うわけです。
お釈迦様が各地に布教に出かける高弟たちに、愛用していた菩提子(菩提樹の実)の数珠を形見分けしたものが略式の数の少ないお数珠の始まりだと言われています。
最近では、パワーストーン等で作られたファッション性の高いブレスレットタイプの物を愛用される方が急増しているようです。
本来、お念珠の素材はお釈迦様がその木の下で悟りを開かれたと言われる「菩提樹」、千億倍の功徳があると言われる「蓮の実」、清浄な香りがある「伽羅・沈香・白檀・栴檀」、その他「紫檀・黒檀・松・梅・鉄刀木(タガヤサン)」などがあり「木珠」と呼ばれます。 木珠の他にも「宝石=貴石」を素材にしたものも多く作られています。
瑪瑙(メノウ)、珊瑚、真珠、翡翠、瑠璃等や植物の樹脂が化石になった琥珀も素材のひとつです。
宗派により、形・玉数などが異なる事もありますが、構成としては左右から紐を通すためにT字型に穴の空いている大きな珠を「親珠=母珠」と呼びます。親珠には「記子(弟子珠)」が20顆の珠がついており、真言や陀羅尼を唱える時に数を数えるためのものです。記子を留めるための涙型の珠を「記子留(露)」と言います。
親珠と記子の間にある小さな珠は「浄名(唯摩)」です。親珠が阿弥陀様なら浄名は観音様になり、お釈迦様なら弥勒菩薩様になります。これは、前任者から引き継いで衆生を救済する菩薩様を表しているためです。
「主珠」は小さい珠で「子珠」と呼びます。一粒一粒に諸仏様、諸菩薩様の名前が当てはめられています。
主珠よりも小さくて材質も異なった四天の珠が4つあります。仏法を護るための四天王です。
(参考:京都数珠製造卸協同組合様の小冊子「京念珠のすべて」)
コンビニや百均ショップなどで売られているお数珠はプラスチック製が多いようですが、こだわりがなく道具のひとつとして捉えるならば気にならないものなのかもしれませんが、身に着けるお念珠として考える時、素材や玉数の意味、材質などにこだわる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
子供たちが成人した時や結婚したタイミングで、長く大切に持っていられるお祝いのしるしとして贈るのも素敵だと思います。私は、息子が結婚した時にはお嫁さんとペアでプレゼントしたいと思っています。
先日は、知多の岩屋寺様で手作りのお念珠体験教室に参加しました。著名なトンボ玉作家の先生に教えて頂き、自作のトンボ玉と好みのパワーストーンと合わせてブレスレットに仕上げた物をご住職様に目の前でご祈祷して頂いて、桐箱に印と文字を入れて頂きました。大満足のお念珠が出来上がり功徳を得られて楽しい体験でした。
皆様も世界で1つだけのお念珠を作ってみてはいかがでしょうか。きっと思い出深いお念珠になると思います。